O氏は精神障害者、精神病というカードを相手への脅しとして常套的に使うことになるのだが、まるっきりの嘘でもない。自律神経失調症の既往症があったからだ。ただ、ふつうの人が精神病と聞けば、対処に熟慮が必要なより重大なものであると想像するだろう。そしてなにより「差別問題」に至る可能性もあるわけだから、できれば関係したくないと思ってもおかしくない。この返答書を送ってしばらくたった九月三日、グローバルリースの担当者と弁護士がO氏の家を訪問する。
(参考)
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「出て行け」、「出て行かぬ」、「それなら裁判を起こす」、「どうぞ起こしてください」の押し問答に終始することになった。後日、その弁護士から手紙が送られてくる。「裁判は起こすが、それはそれとして話し合いも継続したい」というものだ。風向きが変わったのだ。さすがに弁護士は、O氏が厄介な存在であることを見抜いたのだろう。しかも、裁判となれば、どんな単純な裁判であっても相手が上訴すれば一年では終わらない。その間、競落した側はむだな時間を過ごさなければならない。O氏のほうは、別にそのまま住み続けていればいいのだから痛くも痒くもない。弁護士はそこを斟酌したのだろう。やがて裁判になる。じつに単純な裁判で、むろんO氏に勝ち目はない。だが、やれるだけのことをやってゴネまくるのが、O氏のサバイバル手法である。弁護士への返書に記した賃貸契約書や内装費領収書などを持って裁判所へと向かう。